昨年度、保育園の年長クラス役員を務めていました。
2022年3月の年度末に引継ぎを行いましたが、そこで「あれ、どうも私と感覚が違う」と感じたことがありました。これはそのまま保護者で構成される組織において非常に配慮、注意をしなければならない点なんだろうと思います。
実際に導入したもの
以下の物を実際に導入、運用しました。
- Googleアカウント、Googleサービス(使い捨て運用)
- LINE公式アカウント
- パスワードブログ(忍者ブログ)
実際どのような形で運用していたかはこちらの記事に書いてあります。
→保育園のクラス役員作業を少しデジタル・IT化した話
「これを使うと便利」の具体例がないとやってみようとも思ってもらえない
今回の場合は「LINE公式アカウントの運用」と「Googleサービス」が該当します。
どうしてそれを使うに至ったのか、どういう使い方をしてどのように便利だったか、これがあったから助かった部分は何か、楽になったことは何か、などを明確にして伝えて初めて、「使ってみると自分の労力が減らせていいかも」と思います。
今回は「楽になったこと」「あって助かったこと」を強く推しました。
楽になったのは「おたよりの配布回数が減ったこと」、あって助かったことは「感染症流行による臨時休園、登園停止期間中にほぼ全員に連絡できて活動ができたこと」です。
実際、園内で感染症が流行したことにより、卒園式直前の週でほぼ全員が登園停止になったので、おたより配布もできない状況が発生しました。公式LINEアカウントのような全体連絡手段がなかったらと詰んでましたね…危なかった。
いきなりITサービス利用を促すと拒否されると思え
「その会議、学校に集まる必要ないよね。zoomで良いんじゃない?」といって異端児扱いされてしまった、という話を耳にしました。
会議の時間によっては家を空けられないことも多いですし、自宅なら参加できるのに…と思われるのもわかります。私は「自宅なら参加できるのにな」となる場面が結構あります。
そのため、「この時間、私は家を空けられないのでzoomなどのオンライン開催だったら参加できます。他にもそういう方がいらっしゃるかもしれませんし、そういうのは今後どうでしょうか」と聞いてみて、もし可能ならやってもらうのがベターでしょうか。
いきなりいうとほぼ拒否されます。zoomの場合は現場でパソコンをセッティングし、インターネットにつなげ、画面を出力してマイクやスピーカーの確認をしなければなりません。
できる人ならいいですが、できない人だった場合、まず首を縦に振りませんよね。できないと思うから、やってみてももらえません。
保護者組織(PTA)で特に注意すること
以下はITサービス導入にあたって気を付けることの中でも、特に保護者組織で注意することを書いていきます。
保護者組織はその特性ゆえに、一般的な会社で導入することよりも気をつけなければならない点があると思いました。
お金がない!0円!
保護者組織は利益団体ではないので、お金がありません。システム運用費が計上されることはまずないでしょう。
そのため、導入する機能はすべてが無料で使えることが大前提になります。
いくらいいシステムだとしても、有料だとそれを使って得られるだけのメリットを全体に訴えて了承を得なければなりませんし、了承が得られる確証もないわけですから、正直なところ労力に見合わないと思います。
メンバーの8割ほどが確定で入れ替わる
PTAのような保護者組織が会社と決定的に異なること、それは「1年で人が大幅に入れ替わる」ことです。
会社だと1年で部署の人間の大半がいなくなる、総入れ替えになることはないと思います。が、保護者組織だと必ず入れ替えです。例外として2年、3年任期の役もありますが、ほぼ1年で入れ替わります。
そのため、1年で頑張って利用してきた、続けたいIT利用のものを必ず次年度もやってくれるかどうかは次の役の人の運次第です。もし次の方がITに疎い、またはやる気がない場合は続けてくれないかもしれません。
会社であれば導入したら数年は普通使うと思いますが、組織の性格がそもそも違うので「数年は使ってくれるでしょう」と考えてはいけないところです。
運用、保守人員が必ず確保できるわけではない
人が入れ替わる点とも関わりますが、運用、保守の人が次年度メンバーに必ずいるわけではありません。できない人だけで構成されてしまうかもしれません。
複雑なものはそれだけで関わりたくなくなります。「誰でもそれなりにできるもの」を導入すると、続けやすいかなと思います。
また保護者組織は次の方がくじや押し付けで決まってしまう場合もあるので、どのような人が当たるかのすべてが運次第です。
やる気がある人が当たるかどうか…やる気のない人にあたってしまったら、すべてが無になるリスクもあります。まずやってくれないので。
会社だったら、その特性がある人や向いている人が(普通は)配属されますが、保護者組織は完全な運です。
このようなことも含めて、デジタル化で手を出す内容は注意した方がいいです。
実際の引継ぎの様子
ここからは実際の引継ぎの様子を書き残しておきます。
前提:私はWebエンジニアでIT慣れしている側
私はここの自己紹介にも書いているように、Webエンジニアです。仕事のときはパソコンを毎日触ります。色々調べて実装することも多いですし、職業柄「〇〇したいけれど、実装方法はないだろうか」と思ったら調べて、可能であれば実行してしまいます。
たとえば、最近は
- 保育園と小学校からの緊急メールでお迎え要請があったとき、気付くのが遅れたことがあった
- とはいえ一時間おきなどに自分でメールを確認する(※Gmail使用)のが面倒
- スマホに通知もリアルタイムで来ないこともある(原因はよくわからない)
- これをLINEに来るようにしたら、「緊急連絡があったのに気付かなかった」を防げるのではないか?
と思って、保育園と小学校から届くGmailの内容をLINEに転送する方法を調べて実行しました。お迎え要請は来ていませんが、読んでおいた方が良い内容が転送されてくるようになったのでとても便利になりました。
引継ぎ資料の作成方法
私は書類作成関連をすべて任されています。そのため引継ぎ資料もすべて作成しました。
人前に出て話す必要があるので、Googleスライド自分が引継ぎの内容として必要なものを盛り込んで作成し、その内容は他のメンバーにリンクを共有して見ていただきました。その際に過不足があれば修正し、完成にもっていきました。
配布資料としてはスライドをそのまま…とも思ったのですが、枚数が多くなってしまうため、Googleドキュメントに写して別の書類を作って印刷しました。
引継ぎ当日
説明している私が感じたことを書いていきます。
私は私のやりやすいようにやっているので普通のことではありますが、保育園にノートパソコンとモバイルモニタ、延長コード、デザリング用ケーブルなどなどを開きます。全部自前です。クラス役員で管理する物では当然ありませんし、園の物ではありません。
一式をセットアップしている段階で、引継ぎを受ける側のメンバーが「なんかこの人めっちゃすごそう」感が漂います。漂った時点で、「私と同じタイプの人はいないのかな」と察しました。
そして引継ぎ…とはいえ、コロナ対策もあって30分で済ませろとお達しが一応出ていたので、早口で頑張ってしゃべります。スライド途中で質疑応答を挟みつつ…
Googleフォームはわかるけど、その他はわからない
Googleサービスは神だから、一つ専用アカウントを作って運用するといいよ(要約)、の項のことです。
昨今、Googleフォームの回答者になる機会が多くなったためか、フォームはわかるけれどそれを自分たちが作って実施するの?共有って何?
これを私たちが使うの?不安…
説明する側はこんな印象を受けました。IT慣れしている私たちは当たり前に使えるし、もし使ったことがない機能だったとしても必要があれば自力で調べて触ってみて何とか使えてしまうものです。プログラマであれば尚のこと。
ですが、そういったメンバーではなかったようで、「できるのか不安」のようでした。
見ている世界が違う
LINEは使っていても、公式LINEでそんな使い方ができる、自分たちが運用できるなんて思わない。
パスワードブログは何やら難しそう。そんな感触でした。もう見ている世界が違う、と言いましょうか。
できることを、やれる範囲で
「できることをやれる範囲でやればいい」を念頭と最後に置いたためでしょう。
幸い、諸々不安を感じてはいらっしゃるようでしたが、完全拒否感はありませんでした。
裏話
実は現在、同じ園に下の子が通っているので、2年後(2023年度)の年長のときにどのように引き継がれたのか、外側から確認できる状況にあります。
1年おいてどうなったのか、ちょっと楽しみにしています。
まとめ
ほぼITサービスの利用がないところでITの利用を推進、導入するには
- 使うとどんなところが、どのように便利になるか訴える
が重要です。さらに保護者組織という特性を踏まえると
- お金がない
- メンバーの8割が入れ替わる
- 運用、保守人員の確保は運次第
に留意する必要があります。
これから保護者組織等に関わる人の参考になれば幸いです(‘ω’)ノ